雨上がりの虹を、町に。 ——「ふれあいラジオ 雨上がりの虹」がつないだもの(1/5)

2016年9月から2017年3月、熱海ふれあい作業所は静岡県文化プログラム(*)に参加しました。2016年度は「ラジオにのせて、ふじのくに、ソーシャルインクルージョンへのひとしずく」、2017年度は「雨上がりの虹を、町に。」と題し、ラジオ番組の制作を軸にした事業に取り組みました。二ヶ月に一度のペースで制作したラジオ番組は『ふれあいラジオ 雨上がりの虹』として、地元のコミュニティFM局「エフエム熱海湯河原」で放送されました(放送は2018年7月現在も続いています)。これは障害者福祉施設として就労継続支援B型作業所とグループホームを運営する熱海ふれあい作業所が取り組んだ、初めての文化プログラムです。

およそ1年半の間に、福祉施設が文化プログラムに取り組むこと、障害のある人がラジオを番組を作ること、「町へ」とつながることを通して様々な出会いがありました。また、この間に起こった予想外の出来事は、多くの対話を生み、関わる人々がそれぞれの視点でこの事業をより深く考えるきっかけとなりました。

『ふれあいラジオ 雨上がりの虹』の放送内容を軸に、関わった人々へのインタビューを実施し、1年半の記録としてまとめました。

*東京2020オリンピック・パラリンピックで開催される文化プログラムを見据えた静岡県の取り組み。2015年にスタートし、初年度は文化資源の調査を実施、翌2016年度はモデルプログラムを公募し80件の応募の中から10件を選定。2017年度は「文化・芸術振興プログラム」、「文化・芸術による地域・社会課題対応プログラム」の2つの枠組みで13件が選定された。熱海ふれあい作業所は2016年度のモデルプログラム、2017年度の「文化・芸術による地域・社会課題対応プログラム」として選定された。
静岡県文化プログラム https://shizuoka-ac.org/

 

  1. イントロダクション
  2. ふれあいの集い
  3. 公開収録
  4. 出会いと変化
  5. つながりの存在を発信する

 

(1)イントロダクション

『ふれあいラジオ 雨上がりの虹』の番組制作を行ったこの取り組み(以下、2016年から2017年にかけて行った取り組みを「あめにじ」と表記)に登場する主な人物と、熱海ふれあい作業所について紹介します。

荻沢洋子さん(熱海ふれあい作業所 所長)

熱海出身。2005年から熱海ふれあい作業所で経理事務を担当。2015年4月に所長となり2017年6月からは法人の理事長も務める。熱海市の障害福祉の現状や、障害と介護の関係について特に強い問題意識を持つ。高崎史嗣さんが荻沢さんのために選んだテーマソングは「ロッキーのテーマ」。

秋庭好江さん(熱海ふれあい作業所 目標工賃達成指導員)

栃木生まれ伊豆育ち。2011年から熱海ふれあい作業所に勤務。荻沢さんと共に、初めての文化プログラムに取り組む。文化やアートはよく分からないと口癖のように言いつつも、工賃アップと楽しいことへの嗅覚を最大限に発揮しながら日々奮闘している。愛娘は黒猫のあづき。

高崎史嗣さん(元熱海ふれあい作業所 利用者)

「ふれあいラジオ 雨上がりの虹」パーソナリティとして企画・編集までを全て一人で担当した。音楽とジャグリングをこよなく愛し、数年前からコミックマーケット(コミケ)やM3(音楽版のコミケのようなもの)に通っている。精神に障害があり、2013〜2017年に熱海ふれあい作業所へ通った後、現在は就労継続支援A型作業所で働く。

金井周平さん(FM熱海湯河原 番組担当ディレクター/パーソナリティ)

熱海・湯河原のコミュニティFMで長年番組ディレクター、パーソナリティを務める。高崎さんのラジオパーソナリティとしてのセンスと才能に驚嘆し、「ふれあいラジオ 雨上がりの虹」では、高崎さんの番組制作をサポートしてきた。

アサダワタルさん(文化活動家・アーティスト)

2016年度はアドバイザー、2017年度はディレクターとしてあめにじに参加。音楽や言葉を手がかりに、障害福祉やまちづくりなど様々なフィールドで文化活動を展開。ラジオを制作のサポートという役割を超え、高崎さんとの音楽談義を楽しんでいる。

戸井田雄さん(アーティスト、株式会社machimori 取締役)

神奈川県出身。東京、新潟などを経て2012年に熱海へ移住。アーティストとして各地の芸術祭に出品する中で、まちづくりについて考え始める。現在は熱海のまちづくりに取り組むmachimoriでの仕事を中心に、熱海をアーティストが食べていける町にすべく活動している。

鈴木一郎太さん(静岡県文化プログラム コーディネーター)

2016年度から静岡県文化プログラム コーディネーターとしてあめにじの他複数の事業を担当。アーティストとして活動後、浜松市に拠点を置く障害福祉施設で文化事業を担当。2013年、株式会社大と小とレフを設立。各地でプロジェクトの企画やマネジメントに携わる。

辻並麻由(ライター、編集者)

あめにじの記録を担当。2004年頃から大阪の文化芸術系NPOでアートプロジェクトの記録や記録の編集などに携わる。2013年から、障害者の芸術活動にまつわる出来事の記録や編集にも取り組んでいる。

 

【熱海ふれあい作業所】

認定NPO法人熱海ふれあい作業所が運営する就労継続支援B型作業所。1987年、熱海市身体障害者福祉会が身体障害者の働く場所を作るために作った無認可の熱海小規模授産所が始まり。2006年4月の障害者自立支援法施行に伴い、2008年に法人格を取得しNPO法人熱海ふれあい作業所となる。2016年にグループホーム「にじいろあお」を立ち上げ、現在は就労継続支援B型事業所「熱海ふれあい作業所(以下、ふれあい作業所)」とともに二つの施設を法人が運営。身体・知的・精神の3障害を受け入れ、20名の利用者が空き瓶の選別や内職などを行っている。

利用者の増加や、老朽化のため2016年に作業所を大改修。毎日の給食をより美味しく、楽しく食せる空間を中心に置き、シンプルで機能的なキッチンを配した。中央に吹き抜けを設け、明るい開かれた場に姿を変えた。作業所としての使いやすさも増したリノベーションは、2017年グッドデザイン賞を受賞(設計:牧野宏一)した。

利用者も職員も一緒に食べる給食は、熱海ふれあい作業所の名物。ビンの仕分けは重いものを運ぶなど体力を使うため、昼をしっかり食べなくてはもたない。また、一人暮らしや家庭の事情などで給食のほかはバランスを考えた食事を摂れない人もいる。給食で十分な栄養を摂れるように、具沢山の汁物、野菜たっぷりの副菜などを献立に加えている。近隣の漁港から上がる新鮮な魚や、地域から寄付された旬のフルーツなども並ぶ。栄養面だけでなく、みんなと食べる楽しさが毎日施設に通うための動機付けにもなっている。

http://atamifureai.com/

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